アコーディオンの音の止め方には2種類ある

 アコーディオンの音の止め方には2種類あります。

1つは鍵盤/ボタンから指を離す方法。鍵盤/ボタンは押せば内部で音孔蓋が開き、鍵盤/ボタンから指を離せば音孔蓋が閉じます。よって、鍵盤/ボタンから指を離せば音が止まります。

もう1つは蛇腹の動きを止める方法。鍵盤/ボタンを押さえて内部で音孔蓋が開いたままでも、蛇腹からの空気の送り込みが無くなれば音が止まります。

指を離す音の止め方は皆さん当然の行っていると思いますが、蛇腹の動きを止めて音を止める方法、これが非常に重要です。

トンボ・アコーディオン教本をお書きになった伴先生もトンボ・アコーディオン教本、中・上級編で「この奏法こそ、アコーディオン演奏の最大の鍵ともなるもので、そこから生れる表情、表現は、すべての奏法に適用されるものなのです。」と述べられています。

音孔蓋を開けたまま、蛇腹の空気の送り込みのみで音を停止させると、余韻を残して音を止めることができます。アクセントを付けて止めるとき、静かに音を止めるとき、どちらの場合も蛇腹の停止のみで音を止めると響きが全く違います。

空気の送り込みに関しては、蓋の開くタイミングに関わらず、蛇腹の操作のみではっきりと音を出せるようになることも重要です。蛇腹の操作のみではっきりと音が出せるようになるれば、鍵盤/ボタン操作と組み合わせて更に良い音が出せるようになります。

この蛇腹の操作のみで音を出して止める練習は常に行う必要があるため、私の教則ではかなり早い段階(1巻25頁)でこの蛇腹の操作のみで音を止める練習をしています。とはいえ、もうすでに中級以上で初級向けの教則の必要がない方もいらっしゃると思いますので、ここでそのやり方を書いておきます。


蛇腹の操作のみで音を出して止める練習

何の音でもよいので、右手、左手を押さえます。特にこだわりがなければ右手ド、左手ベース ド+コードCや、右手ソ、左手ベース ソ+コードG あたりでよいでしょう。

このとき、蛇腹を閉じたまま、音を出さずに押さえます。つまり、音孔蓋を開けた状態にしておくのです。その状態から音を出し、鍵盤/ボタンを押さえたまま蛇腹の動きを止めて音を止めます。大きく短く鋭く鳴らして止める、小さく短く鋭く鳴らして止める、伸ばして(その場合も鳴り始めははっきり鳴るようにする)音を小さくしていって止める練習をします。これを開き方向でも閉じ方向でもできるように練習します。


ピタっと音を止めるコツ

やってみるとお分かりになると思いますが、ピタっと音を止めるのが難しいと思います。ピタっと音を止めるのにはコツがあります。開き方向で音を止めるときにはほんの少しだけ(1mmくらい)閉じ方向に戻します。鳴り直してしまうと戻しすぎですので、止まる程度にほんの少しだけ閉じ方向に戻します。
閉じ方向で音を止めるときはその逆で、ほんの少しだけ開き方向に戻します。
このときに多少の筋力は必要になりますが、筋力よりも自分の腕の動きをしっかり意識できるかどうかが重要です。


良い音が出ているかを確認する

鋭く短く止める練習をしていると、パンッとかキンッという響きが得られる時が出てくると思います。それがお持ちの楽器の出す良い音です。音量の大小にかかわらずその良い響きが得られるように空気を送りこむことがより良い演奏につながります。良い響きが得られたときに、蛇腹の開閉で重要なのは開き始め、閉じ始めの速度であることが分かると思います。
曲では鍵盤/ボタンを押さえた状態から弾き始めることはありませんが、この開閉の仕方と鍵盤/ボタン操作が組み合わされば音色が今までと変わってくるはずです。


曲の終わりは必ず蛇腹の操作のみで音を止める

曲にもよりますが、曲の途中で蛇腹の操作のみで音を止めるタイミングをいくつか見つけることができます。両手とも休符の前の音は蛇腹の操作で音を止めたいですね。そして曲の終わりは必ず蛇腹の操作のみで音を止めます。鍵盤/ボタンから指を離して止めてしまうと、音孔蓋が閉じ余韻が失われます。曲の最後は聴き手に強い印象を残しますから、一番気を付けるべき箇所と言ってもよいと思います。あと、この蛇腹の操作のみで音を止める技術は常に意識して行わないとなかなか身につかない技術でもあります。なので、曲の終わりは必ず蛇腹の操作のみで音を止めるようにしましょう。


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